ローソクの灯りのもと、静かに食事を楽しむ土曜の夕べ。レッスン週は土日もひたすら仕事の私でも、時間をかけて夕食を外でとることで、気分だけは休日仕様で、のんびりリラックスしたひとときを過ごせて幸せ。
前回のお休み中は本当にお呼ばれが多く外食の機会が多かったのですが、今回はコジマさんでの送別会を除くといつもの鰻屋さんのお座敷を借り切って友人一同で美味しいうなぎを楽しんだだけ…ほかの日はほぼ毎日お家ご飯で、簡単なものでしたが、きちんと自分で作って過ごしました。
夏の間に教えたいメニューは先月たくさん考えておいたから、献立のアイディアを拾うまでもなく、純粋に食事を楽しむために恵比寿にあるリストランテ「ダ・ディーノ」さんへ…こじんまりしたお店ですし、奥様のサーヴィスで、沼尻シェフがお1人でフルコースを作って出されていますから、少人数で静かに話をしたいとき訪れるのがおすすめ。
いつものことながら、前菜からドルチェにいたるまで、隙のないきりっとした美しい仕事ぶり、そのうえ「うーん、これは美味しい!」と唸らせる一皿が必ずあります。
仕事が忙しくなる直前の土曜の夜、心臓病のお犬様の薬代の高さに喘いでいる私のお財布を考えて、友人からは、「では、明日はワタミか?」と心配されましたが(でも、実はWATAMIって行ったことがないんですw…興味はある)、こんなときこそ本当に美味しいものを食べないと元気が出ません。
フリウリ産の冷えたシャルドネをコースのお供に。
白に関しては、ごく普通に「シャルドネ」好きから始まって、しばらく「ソーヴィニョンブラン」の時代が続いていたのですが、最近再び「シャルドネ」が好き。でも、「リボラジャッラ」とか「ヴェルデッキオ」、「ヴェルメンティーノ」など、イタリアの地葡萄からできる白ワインももちろん好き。
突き出しは、蒸しアワビと冬瓜の冷菜。
レッスンでも思い出したようにサラダに加えてみましたが、そもそも「冬瓜」というのも、香港通いで出会いを果たし、こちらのお店で目覚めた食材です。関東の一般家庭では、冬瓜って夏でもそんなに食べる習慣がないのではないでしょうか?
真面目で寡黙なシェフには意外にお茶目な趣味があるのか、昨年夏のドルチェ、「皮を向いた巨峰&そっくりな巨峰ゼリー」に続いてだまし絵のようなテクニックが今回も…冬瓜&冬瓜そっくりのゼリー。しっかり寒天で寄せられているので、食感の差がまた楽しい。
冬瓜とオリーブオイルの相性のよさにびっくりし、この初夏の定番料理を初めて頂いたときには、思わず自宅でハマグリを使って再現してみました。今月のレッスンでもちらっと作り方の秘訣をご紹介しましたが、案外和食の献立にも違和感なくプラスできる便利な冷やし鉢です。
やわからく蒸し上げられたアワビと添えられたアワビの肝も美味。肝も寒天で寄せてあり、ちょうどピータンくらいの食感です。アワビというのもとっても好きな食材なのですが、レッスンでは(いや、自宅でも…)なかなか使えなくて残念!
店内の証明がとても暗いせいもあって、写真は相当ひどいけど…冷たい前菜は、「鰹のカルパッチョ」。ちょうど「鰹」について考えていたところに「鰹」が出ました。
鰤だの鰹のような脂ののった少しクセのある魚が、残念ながらあまり得意ではありません。食べられないわけではなく、お店によって出されたときに特有のクセを「苦手だなぁ」と感じることも多い。
夜の営業しかされていないので、毎朝自ら築地に仕入れに行かれているシェフの出す魚介はいつだって新鮮美味。今回の鰹もタタキ風に皮は香ばしく焼かれていて、生臭くなく、私の苦手な金臭い感じもなく、本当においしかった。
続く温かい前菜は、「天然鮎のグリル」、イタパセとワタの2種類のソースが添えられています。中骨も素揚げにして、ぱりぽりと。勝手なもので、鮎特有の苔臭さというか、緑っぽい感じ?は好きなのです。いつの日か嵐山吉兆さんの夏の名物の鮎も是非食べてみたいな。
コースはプリフィックスのみで、プリモとセコンド、ドルチェだけをお好みで選べます。友人のプリモは「ウニとトマトのパスタ」。
私は「サマートリュフのタリオリーニ」をチョイス。この日唯一惜しまれたのはこのサマートリュフで、薫りが弱かったかなぁ、と思います。夏のトリュフはもちろん旬のそれよりやさしい薫りが特徴なので、バタバタ働いた後で駆け込んだ私の鼻が悪かったのかも。トリュフの香りが大好きなので。
たまたま他に1組のお客様しかいらしてなかったので、申し訳ないけれど今日はプリモもセコンドもそれぞれが食べたいものを別々に…。友人が選んだ「豚のアリスタ」も素晴らしい焼き加減だったけれど、私のラム芯も本当に見事な火の入りかたで実に美味しかった。コントルノのカルチョーフィが、ちょうどラムチョップの骨みたいに見えます。
帆立をパンチェッタで巻くセコンドをレッスンメニューの候補に考えていたところだったから、何となく選んだセコンドでしたが、美しいローザに焼き上がったジューシーなラムは本当に美味しかった!重複してしつこいようですが、美味しいものは、「美味しい」としか表現のしようがない感じ。
食後は滅多に焼き菓子を頼まないのに、こちらはお菓子もおいしいので、「ヴァニラのスフレ」を選びました。温かいスフレに添えられたグレープフルーツのソルベがとてもさわやか。
最後のプチフールは定番のラインナップ。でも、このプチフールまで作り置き感がなく、いつも新鮮で美味しく、最後まで抜かりない仕事ぶりです。
料理には数学などと違って正解はなく、私が美味しいと思うお店も、また私自身が心を込めて作る料理も、万人が美味しいと思うわけではないのはわかっています。そこが時折自信をなくす原因でもあり、また料理の面白いところでもあって、「料理の道には終わりがないなぁ」と思うのです。
しかし、お1人でこれだけ完成度の高いコース料理をサーヴィスされるシェフがいらっしゃるのだから、私ももっと頑張らないと。